かなしいことなんかじゃない 

妄想と力、妄想は力。正しい恋愛のありかたを、妄想を用いてアカデミックに考察するブログ

洋楽好きの美少女と恋愛するなら

 お気に入りのミュージシャンのライブに行くと、女性のお客さんが少なからず会場にいて、中には自分好みの美少女も混じっているから、なんだかいつもドキドキしてしまう。おなじ趣味を持っているのだから、声をかければ話が弾み、もしかしたら仲良くなれる可能性だってあるのだけど、小心者のため、そんな大それたことはできやしない。それがスタンディングのライブだったら、美少女の後方にまわりこんで、彼女の思考を、プライベートを、性癖をいろいろ妄想して楽しむだけで精一杯である。なぜ、隣ではなく後方なのかというと、自分好みの美少女は必ず柑橘系の良い香りがするもので(いくら顔がよくても、柑橘系の体臭をまとわない女の子は美少女とはいえない)、美少女の背後が、その香りを体全身で浴びることができるベストポジションだからである。

 そういえば先日、再結成ストーン・ローゼスをみるためにソニックマニア2013に行ってきたのだが、幕張メッセ内でも多く自分好みの美少女を発見することができた。あまりに人が多くて柑橘系体臭ベストポジションをキープすることは断念したが、まあ、そんなことはどうでもいい。

 ソニックマニア2013の動員数は2万人らしいが、観客の男女比は多分3:1くらいだったと思う。だとすると、そのなかで洋楽を好む自分好みの美少女は、多く見積もっても2000人はいたと妄想できる。2000人! 楽しく洋楽談義ができて、おしゃれで、純真無垢で、Hで、柑橘系の香りを漂わせる2000人の美少女軍団! 一体彼女たちは、普段どこに生息しているのだろうか?

  自分は今年31歳になるが、学校でも、アルバイト先でも、職場でも、楽しく洋楽談義ができて、おしゃれで、純真無垢で、Hで、柑橘系の香りを漂わせる美少女など、一度もお目にかかったことがない。ソニックマニアに集まっただけで2000人、全国的に見ればさらにその数倍、少なく見積もっても16000人以上の楽しく洋楽談義ができて、おしゃれで、純真無垢で、Hで、柑橘系の香りを漂わせる美少女がいるはずなのに、どういうわけだか、自分はそんな美少女たちと私生活で巡り合えない。

 

 洋楽と女の子という大問題。それに答えをだそうと取り組んでいる言論の場に2ちゃんねる「女「音楽何聴くの~?」というスレッドがあり、そこで以下のようなやりとりが交わされている。

 

 

40 :名盤さん:2012/01/10(火) 13:15:16.94 id:mMWf0m0f

フジやサマソニに居る女たちって普段どこに隠れてんの?

45 :名盤さん:2012/01/10(火) 23:02:25.22 id:j34clrV6

>>40 ほんとに疑問 マジでお近づきになりたい

49 :名盤さん:2012/01/11(水) 02:24:18.90 ID:5alnTzmu

>>45 めんどくさいの多いぞ ライブ会場やフェスで見ると最高に可愛いのに街で他の女の子と比べると可愛くなさに額然とする そしてギャルやお姉系に敵意むき出し

 

 つまり、ライブ会場ではキラキラ輝いていて、洋楽談義ができ(るはずで)、おしゃれで、純真無垢で、Hで、柑橘系の良い香りを漂わせるあの美少女達も、会場から一歩外に出ればただの自意識過剰なブスでしかないため、自分の目に留まらないということだろうか? そう考えると職場や、学校にいたあのブスも、このブスも、もしかしたら知らなかった(いや、、知ろうともしなかった)だけで、じつは洋楽を愛していたのかもしれない。もう記憶の中から抹消されたブスたちが、ライブ会場では特別な輝きと柑橘系の体臭を放って、知らず知らず背後に忍びよっていた自分をムララムさせていたと考えると、なんとも複雑なきもちになってくる。

 

 先日、本秀康の『レコスケくん』というマンガを読んだ。レコードコレクターの特異な生態をほのぼのと描いたなかなか面白いマンガだったが、唯一、作中ヒロインの「レコガール」嬢の存在だけが腑に落ちなかった。レコガール嬢はスワンプロックの愛好家で、ジェシ・エド・デイヴィスの『ウルル』を一番好きなレコードに挙げる、ウエスタンハット美少女だ。レコードコレクターではない自分にも『レコスケくん』の挿話や小ネタは共感をこめて読めたのだが、このレコガール嬢は、地に足のついていない、ファンタジーに思えた。
 ソニックマニアという一般的な(ある意味ミーハーな)音楽イベントに、本当は美少女などいなかったというのに、さらにニッチなスワンプロックというジャンルのファンに、そして中古盤屋に、洋楽談義ができて、おしゃれで、純真無垢で、Hで、柑橘系の良い香りを漂わせる美少女などいるわけないだろう*1

  とはいえ、こうも考えられる。『レコスケくん』の笑いの大半は、レコードコレクターの心理や行動にまつわる”あるある”ネタで占められている。つまり、レコガール嬢の存在というのは、モテないレコードコレクターの描く一般的妄想”あるある”、美少女と一緒に中古盤屋デートして、勢いで散在しちゃっても「いい買い物したね」と褒めてくれて、昼食はオシャレなカフェとかじゃなく牛丼屋ですましてもブーブーいわず、楽しく無人島レコード談義に花を咲かせたいなぁ、という妄想。それを具現化した存在がレコガール嬢なのかもしれない。もちろん自分もそんな妄想を描いたことが何度も、何度も、何度だってある、あるに決まっている。

 

  幕張メッセにも、場末の中古レコード屋にも美少女はいない。洋楽好きの美少女などこの世にはいない。洋楽ファンは妄想の中で、自分だけのレコガール嬢を思い描いてアレコレ、楽しいことやいけないことや気持ちいいことを繰り広げればいい。そして、それはけっして、かなしいことなんかじゃない。妄想には無限の快楽がつまっている。

レコスケくん COMPLETE EDITION

レコスケくん COMPLETE EDITION

*1:先日手に入れたワーナーの新・名盤探検隊のチラシにも本先生はマンガを寄稿してて、そこにもデラニー&ボニー(!)が好きだという緑髪の美少女が出てくる