かなしいことなんかじゃない 

妄想と力、妄想は力。正しい恋愛のありかたを、妄想を用いてアカデミックに考察するブログ

『FURTHER ALONG-20th anniversary mix』についての極私的雑文

  先日発売された、スパイラルライフの『FURTHER ALONG-20th anniversary mix-』を聴いているが、あぁ、なんだか居心地が悪い。

 いや、作品自体はとても素晴らしいと思う。淡く、朝もやのなかを手探りで彷徨うようなオリジナル盤の質感にたいして、『FURTHER ALONG-20th anniversary mix-』は足取りがしっかりした印象をうける。”もっと遠くへ”と歩を進める、ふたりの息遣いも聞こえてきそうなほど、音が生々しい。ほんと、かっこいい。

 当時のインタビューで、スパイラルの二人は、「ぼくらはロッケンローバンドだ」と、よくいっていたが、そのロッケンローな姿勢がよくわかるMIXで、当時、これがでてたら、もっと男子のファンが増えただろうな、と思った。

 生まれ変わったタイトル曲の「FURTHER ALONG」はドラマチックだし、なんだか安っぽくていつも飛ばしていた「アンサー」は、一本芯がとおったかんじに聞こえ、楽曲の魅力を再発見できた。

 そして、付属のブックレットに寄せられた石田ショーキチの文章が感動的だ。当時のスパイラルのおかれた環境や、車谷浩司との関係を最初は客観的に、またアイロニカルに描きながらも、最後に思わず漏らされる「我が戦友」という謝辞(!)。いや、この所感にいたる文章が、「さて」と、わざわざ重い腰をあげてから書きだされていることから、これが石田ショーキチの計画的なファンサービスで、車谷へあてた本音ではないような気もするんだけど……、うん、やっぱり嬉しい*1。かつてのパートナーに感謝の言葉を投げかける、たったそれだけのことがどうして胸を打つのか、スパイラルを知らない人に説明するなら、ジョニー・マーモリッシーに、もしくはジェイソン・ピアースが、ソニックブームに……、ってな感じだろうか。なんか、ふたりの関係性ってのは、ファンにとっていまだハラハラドキドキするものだから。

 ブックレットを読みながら音を聴くことで、その当時の制作風景や、作者の心情に思いをはせ、さらに音楽への理解や愛着が深まる。スパイラルの元ネタや、メンバーが紹介する洋楽CDを日本版で買って、ライナーを読みながら、海の向こうの音楽をワクワクしながら聴いていた十代のころを思い出して、なんだか甘酸っぱい気持ちになった。

 と、まあ、勢いにまかせて書いているのだけど、これも自分の居心地の悪さを払拭しようとしているのか。思い出すのは、じぶんの初セックスで、恋人に童貞とばれたら恥ずかしいと思って、風俗にいって女体になれておこうと思ったら、逆に風俗にはまってしまって、いざ挑んだはじめてのセックスが物足りなくて、それで更に風俗にかよってしまい、ついつい恋人に風俗嬢みたいなプレイをたのんだら嫌われた。わたしが『FURTHER ALONG-20th anniversary mix』に抱く居心地の悪さは、簡単にいえば、まあ、そんな感じである。 

FURTHER ALONG-20th anniversary mix-

FURTHER ALONG-20th anniversary mix-

*1:そういえば、解散後にロッキングオンJAPANの大食い対決で、ふたりがメッセージをかわしてたな